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経営者保証を解除するには

金融庁の「企業アンケート調査の結果」によると、およそ7割以上の企業が「借入金の金利が上がったとしても経営者保証を解除したい」と回答しており、仮に経営者保証の解除ができるのであれば、借入金の金利が上昇してもよいと考える企業が相応に存在することがうかがわれています。

【「監督指針」の変更で金融機関における経営者保証解除の取り扱いはどう変わったのか】

2023年4月1日に金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」が改訂されました。この改訂により今までよりも経営者保証が外しやすくなりました。 

ニュース等で「経営者保証が外しやすくなった」と知っておられる方が増えていると思いますが、どうやったら外せるのかはわからないかと思います。

【監督指針の変更による経営者保証に関する変更点】

2023年4月の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の変更による経営者保証の取り扱いに関する変更点は、ご覧の3点です。

 【監督指針の変更による経営者保証に関する変更点リスト】

1.個人保証を徴求する際には、金融機関はその理由を説明しなければならなくなった

2.同時に「どうすれば経営者保証を解除できるか」について個別具体的に説明しなければならなくなった

3.金融機関は個人保証を徴求する理由を説明したことを書面又は電子的方法で記録しておかなくてはならなくなった

ひとつめの
「個人保証を徴求する際には、金融機関はその理由を説明しなければならなくなった」とは、金融機関が新たに融資をする際に経営者保証を徴求する場合、金融機関は債務者に対し、「今回、これこれこういう理由で経営者保証を徴求させていただきます」と、「何が不足しているために経営者保証を徴求するのか」という具体的な理由を言わなくてはならなくなりました。

ふたつめの
「同時に「どうすれば経営者保証を解除できるか」について個別具体的に説明しなければならなくなった」とは、ひとつめの理由を伝えた後、「今後、これこれこういう条件をクリアすれば今回の融資における経営者保証を解除できる可能性がありますよ」と、「経営者保証解除のために具体的に何を行えばいいのか」についても伝えなければならなくなりました。
これにより、その条件をクリアした場合、債務者は金融機関に対し、経営者保証解除の申し出をしやすくなったのです。 

3つめの
「金融機関は個人保証を徴求する理由を説明したことを書面又は電子的方法で記録しておかなくてはならなくなった」とは、ひとつめとふたつめの説明を行ったことを、きちんと記録として残さなくてはならなくなりました。

【経営者保証を求められたときに行っておくべきこと】

これらのことを踏まえ、金融機関から新たに融資を受けた際に経営者保証を求められたときに経営者が金融機関に対し行っておくべきことは、 

【経営者保証を求められたときに行っておくべきことリスト】

  1.   個人保証を徴求する理由を具体的に聞くこと
  2.   経営者保証を解除できるようになるための具体的な条件
  3.   「個人保証を徴求する具体的な理由」と「経営者保証を解除できるようになるための具体的な条件」の記録です。 社長自身が記録しておく必要があります。金融機関の記録をくれと言ってもまずくれません。

の3つです。

融資を実行するとき、借入を行う法人は「金銭消費貸借契約証書」に会社名の社名判と実印の押印をして金融機関に提出します。経営者保証が必要な場合は、「金銭消費貸借契約証書」内の「保証人欄」に、保証すべき経営者が記名と実印を押印しなければなりません。
また、同時に「保証約定書」の提出も必要です。

本来であれば、その際に金融機関は「経営者保証に関する説明」が必要とされています。しかし、それらの対応義務は支店レベルでは浸透していない可能性があります。

もし説明がなかった場合は、経営者は金融機関に対してこのように尋ねましょう。
「今回、経営者保証が必要とのことですが、どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか、ご教示いただけますか」「今後、どのような改善を行えば、経営者保証を外してもらえますか」

この2つの質問をすることで、金融機関側は説明義務について気づいてくれるため、説明してくれるでしょう。

その際、もっとも重要になることが、みっつめの「記録する」ということです。
具体的には、金融機関側から説明してもらった「個人保証を徴求する具体的な理由」と「経営者保証を解除できるようになるための具体的な条件」を、その場でメモしておき、日付と応対者名を記入した上で、担当者に対し、「今、ご説明いただいた内容は、このメモの内容で間違いないですか」
と確認してください。 

金融機関には、経営者保証を徴求した際の説明について記録しなければならない義務がありますが、その記録を債務者に渡すということまでは義務とされていません。

この説明をきちんと記録した上で確認しておくことで、後に「経営者保証を解除できるようになるための具体的な条件」をクリアし、経営者保証解除の依頼を行う際に、
「以前、こう説明いただきましたよね」と抗弁することができるようになります。 

その記録をとっていなければ、金融機関は「経営者保証を解除できるようになるための具体的な条件」をクリアしたとしてもとぼけてくる可能性もあるからです。
記録を取っていれば「あなたの方でも記録をとっているでしょうから、その記録と突き合わせてみますか?」と言うことができる。

【経営者保証ガイドラインの3要件】

経営者保証を外したい場合は、内部又は外部からのガバナンス強化により 経営者保証ガイドラインの3要件を将来に亘って充足する体制が整備されていることが必要となっています。 

【経営者保証ガイドラインの3要件の具体的な内容】

経営者保証ガイドラインの3要件の具体的な内容は、

(1) 法人と個人の分離
(2) 財務基盤の強化
(3) 積極的な情報開示

となっています。
それぞれの項目について説明いたします。 

(1) 法人と個人の分離
融資を受けたい企業は、役員報酬・賞与・配当、オーナーへの貸付など、法人と経営者の間の資金のやりとりを、「社会通念上適切な範囲」を超えないようにする体制を整備し、適切な運用を図る。 
「仮払金・貸付金における社会通念上適切な範囲」というのは、法人から経営者への貸付金・仮払金等が、総資産の1%以下又は100万円以下」と定義している信用保証協会もあります。
役員報酬・賞与・配当なども取り過ぎているとみられると法人と個人の分離がなされていないとみなされます。基本的には社長に対する貸付金・仮払金があるかをみられることが多い。 

(2) 財務基盤の強化
財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である。
損益計算書が黒字となっているか、自己資本比率が一定程度確保できているかを見ます。この部分が金融機関の裁量に任されているため、経営者解除に消極的な金融機関は、この財務要件のハードルが高くなっていることが少なくありません。

(3) 積極的な情報開示
融資を受けたい企業は、自社の財務状況を正確に把握し、金融機関などからの情報開示要請に応じて、資産負債の状況や事業計画、業績見通し及びその進捗状況などの情報を正確かつ丁寧に説明することで、経営の透明性を確保する。
情報開示は、公認会計士・税理士など外部専門家による検証結果と合わせた開示が望ましい。

となっています。これらがガイドラインに書いてある。 

この経営者保証ガイドラインの3要件を満たすことで、
「事業者は、経営者保証なしで融資を受けられる可能性がある」
「すでに提供している経営者保証を見直すことができる可能性がある」
と、中小企業庁の「経営者保証」に関するサイトには記載されています。

【経営者保証を外すための交渉をするために準備しておくべきこと】

いきなり金融機関に対して「経営者保証を外してほしい」と依頼したとしても、ほとんどの場合は「無理です」と門前払いされると思います。

経営者保証を外す交渉をするためには、「金融機関が外さざるを得ない状況」を作っておく必要があります。
事前の段取りが重要になるのです。
そのために準備しておくべきことがあります。

【(1)経営者保証を外すことに積極的に取り組んでいる金融機関と取引を行う】
【(2)経営者貸付・仮払いを解消する】
【(3)EBITDA有利子負債倍率を10倍以内にする】
【(4)自己資本比率を高める】
【(5)事業計画書を作成する】
【(6)毎月金融機関を訪問し、試算表の提出と前月の業況報告を行う】
【(7)経営者保証を外すことに詳しい専門家のサポートを受ける】


これらの具体的方法については、個人面談で説明させていただきますので、経営者保障を外したいとお考えの方は、お気軽にお問い合わせをいただければと思います。

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